先日、Google Japanの会長であり、『村上式シンプル英語勉強法』
でもお馴染みの村上憲郎氏が大学に講演に訪れ興味深い話をしてくださったので少し紹介しようと思う。
題目は、『Googleは何をしようとしているのか?』というものであり、クラウドの話でもするのかと思って聞きにいったわけだが、見事に期待を裏切られた。もはや「Google=検索エンジンの会社」という認識も改めなければならないかもしれない。
Googleのミッション
話の本題に入る前に、少しGoogleについておさらいしておく。Googleには会社全体で共有しているミッションがある。聞いたことがあるかもしれないが、
“Organize the world’s information and make it universally accessible and useful. ”
というものである。これは、「世界中の情報を整理し、世界中から便利に使えるようにする」といった意味だと思うが、こうしたサービスを提供していくことに関して、村上氏は、
「このサービスを、“無料”で利用できるようにする」とおっしゃっていて、
“無料”というのが重要であることを繰り返し強調していた。その理由は、
有料にするとどうしてもお金を取りやすいサービスになってしまい、ユーザの利便性が損なわれてしまうからだという。僕が以前働いていたITベンチャーでは新しいサービスを作るときに、ユーザからお金を取りやすくすることを意識しているような気がしていた。日本のIT企業が、本気で世界にサービスを提供していくことを考えると、サービス指向の開発が必要なのだと思う。
そして、このGoogleのビジネスモデルを簡明に表したものが、
鉄の三角形である。優れたサービスを無料で提供し、未来永劫なくなることはないビジネスである広告で収入を得る。そして、それを高度な技術が支える。このとてもシンプルな構造がGoogleの本質であり、この鉄の三角形を維持していくことがGoogleの発展につながっていくとうことを頭に入れておいていただきたい。
クラウド・コンピューティングを行う上でのボトルネック
クラウド・コンピューティングは以前から話題にあがり、関連する書籍もたくさん出ているが、村上氏は
「クラウドサービスを提供するための基盤は、今後とも拡大を続けていかねばならない」
と言った上で、こうしたサービスを提供していく上でボトルネックになるものがあることを教えてくれた。それは、莫大な数のハードウェアを稼働させるための
電力である。
グリーン・ニューディールとスマートグリッド
クラウドを支える巨大データセンターを稼働させるためには原発1基分にも相当するような電力が必要になる。もちろんGoogleでも省エネ対策には力を入れていて、企業努力でなんとかなる限界まで効率よく電気を使っているという。そこで、Googleが提言していることは、
持続的に利用可能な発電を利用することで、環境に配慮しつつ、電力を効率よく生産するというものである。そして、この
『環境対策+電力生産の効率化』こそが次にGoogleが提言していることである。
グリーン・ニューディール
折しも、オバマ政権は世界的な金融危機からの脱却に向けて環境対策を推進している。そのキーワードとして挙げれらているのが
「グリーン・ニューディール」である。
オリジナルは、英国を中心とする「グリーンニューディール・グループ」が今年7月に発行したレポートである。このレポートは、市場原理主義や無限成長を前提とする資本主義とは異なる、持続可能で公正な経済社会のあり方を求める「ニュー・エコノミック財団」(NEF)が事務方として取りまとめたもので、金融・気候・エネルギーという「3つの危機」(Triple crunch)に対して、新エネルギーを中心とした「グリーン・ニューディール」を求めたものだ。
スマート・グリッドとは?
このグリーン・ニューディールの中心となっているのが
スマート・グリッド(賢い電力網)である。
『「スマート・グリッド」構築がアメリカの競争力維持に向けたコア・プロジェクトになる!』によると、スマート・グリッドとは、
1.「スマート・グリッド」とは「賢い送電網」のことである
2.停電や断線から自力で立ち直り、消費者から電力会社への「売り返し」を可能に
3.「スマート・グリッド」はアメリカの競争力維持のコア・プロジェクト
という特徴があり、環境を考慮しつつ、雇用も発生させ、資源も節約できるというすばらしい政策だと言える。村上氏は、シリコンバレーでもこのスマートグリッドがブームで、新たなビジネスチャンスを狙って人材が流れ込んでいると言っていた。もちろんGoogleも『グーグル、「Google PowerMeter」でスマートグリッド分野に参入』などの動きをみせるなど積極的に動いているが、Googleとしては、安定した電力を維持することが、最初に挙げた鉄の三角形を維持していくために必要不可欠だと考えているため、今後も様々な施策を打ってくることが予想される。
■関連記事・本
米国で活発化する「スマート・グリッド」
まとめ
以上の話をまとめると以下のようになる。
- Googleは自ら掲げたミッションを達成するために鉄の三角形を維持していく必要がある。
- クラウドの仕組みはほとんど完成していて、課題は電力。
- 電力問題の解決のために「スマート・グリッド」に投資をしている。
『世界中の情報を整理し、世界中から便利に使えるようにする』というミッションを達成するために、ついに社会のインフラ事業にまで手を伸ばし始めたGoogleは改めて特異な会社だと感じることができた講演会であった。
※追記(2009/05/09)
村上氏の言葉と自分の考えを混同して書いている箇所をご指摘いただいたため、該当箇所を修正。